【通勤手当や通信費用は?】テレワーク時の労務管理のポイントを徹底解説

【通勤手当や通信費用は?】テレワーク時の労務管理のポイントを徹底解説

2020年8月4日に、みらいコンサルティンググループ様とジョブカンで、「中小企業が行うべき”本質的な”テレワークとは?」というタイトルでセミナーを共催致しました。

本セミナーは3回連続講義となっており、4日は第2回目として、テレワークにおける労務管理のポイントをご紹介。

勤務時間管理の他、「知りたい!」とご要望の多かった通勤手当・在宅勤務手当・通信費用等の取り扱いについてもお話いただきました。是非自社のテレワーク制度を検討する際の参考にしてみてください。

(第1回目のレポートはこちら

テレワークにおける就業管理の基本の“き”

テレワークにおいても、通常のオフィス勤務と同様に労働関係法令が適用されます。

労働時間の管理

そのため、テレワークにおいても労働時間の管理(把握)は会社の義務となります。

会社は、社員の労働日ごと始業・終業時刻を確認し、記録する必要がありますが、従業員の勤務状況が見えづらいテレワーク時にはどのように把握すればよいのでしょうか。

テレワーク時の労働時間管理において、長時間労働や未払い賃金のリスクが少なく労働時間管理の原則に則った方法は「勤怠打刻システムなどを利用した客観的な管理(把握)」です。システムを使わなければ、正確な労働時間の管理は難しいでしょう。

テレワーク時には、オフィス勤務時よりも、離席や中抜けの把握がしづらくなります。テレワーク用の管理ルールを新たに定めること対応しましょう。

<離席や中抜け等のルール例>

・チャットで報告
・勤怠システムに打刻
・スケジューラ―やカレンダーに登録
・時間単位の年次有給休暇を使用する 

数分刻みで細かく管理する必要はないかもしれませんが、30分程度業務から離れる場合は、上記のようなルールで対応したほうが良いでしょう。勤務状況を把握できていないと仕事の管理も疎かになってしまう可能性があります。テレワーク時であっても、しっかりと“見える化”することが望ましいです。

様々な労働時間制度の活用

テレワークとそのほかの労働時間制度を組み合わせることでより柔軟な働き方が可能になります。それぞれのメリットや注意点を確認しましょう。

①テレワーク×フレックスタイム制

フレックスタイム制とは?

一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業および終業の時刻を自ら決めることができる制度

フレックスタイムと併用することで、オフィス勤務の日は労働時間を長く、在宅勤務の日は労働時間を短くするなども可能になります。社員の都合に合わせて始業や終業の時刻が調整できるので、子育て中の社員や、通院のある社員にとっ非常にメリットのある制度となります。

②テレワーク×事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは?

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす制度

※所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合には、その「通常必要となる時間」をみなします。

テレワークが普及する前は、外回りの多い営業の方等に適用されることの多かった制度です。事業場外みなし労働時間制は、在宅勤務についても適用することが可能ですが、3つの必須要件があります。

①当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

ある程度従業員が自由に仕事ができる場合には、適用されるイメージです。細かに業務報告をさせるような場合には適用が難しくなります。

そのため、事業場外みなし労働時間制を利用する場合は下記のようなデメリットも存在します。

・「事業場外みなし労働時間制」を否定されるリスク
もし否定された場合は、実労働時間に対する未払い賃金が発生する恐れがあります。最近は携帯電話等で、頻繁に業務指示・連絡が取れる環境にあるため、事業場外みなし労働時間制の適用は難しいと判断される傾向があります。

・長時間労働になりがち
従業員本人に労働時間の管理を任せることになるため、長時間労働になっていても発覚しづらいというデメリットがあります。故に、健康被害、労災などのリスクも高まります。

・割増賃金が発生しないわけではない
一部事業場内で勤務した場合、場合によっては、その時間とみなし労働時間とを合算した結果、8時間/日を超える場合は割増賃金が発生します。

※法定休日労働もみなし労働時間分の割増賃金が必要
※実際に深夜(22:00~5:00)に労働があった場合には、割増賃金が必要

③テレワーク×裁量労働制

裁量労働制とは?

業務の性質上その適切な遂行のためには、遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に就かせた場合には、決議や協定で定めた時間労働したものとみなされる制度。ただし導入には労使協定の締結届出や労使委員会の決議などの各種要件が必要です。

適用できる職種が限定される制度です。労使協定で定めた時間以外の労働時間は発生しないため、労働時間管理が簡素化されるメリットがあります。一方で、社内に裁量労働制を適用できる職種とできない職種が存在する場合、社内で複数の労働時間制度が存在することになります。(エンジニアは適用可である一方、営業職は適用不可)

④テレワーク×時差勤務

始業時刻、終業時刻の繰上げ繰下げを一定のルールのもと許可することで、より柔軟にテレワークを行うことが可能になります。ただし、管理の上で必ず事前申請させ、許可制とする等のルールは必要でしょう。

【まとめ:各労働時間制度比較】

業務に関する頻繁な具体的指示が不可の場合であっても、会議への参加指示等は可能です。(毎日〇時に会議を実施するので参加してください、等は社員の労働時間の決定主体性がないためNGと判断されるリスクがあります)

上記いずれの労働時間制度の場合でも、労働時間の管理(把握)は必要です。
社内の職種の特徴等にあわせ、管理職や経営層と相談しながら検討しましょう。

長時間労働の防止策

テレワークであっても36協定は適用されます。
仕事と私生活の区別がつけづらく、人によって長時間労働になりがちですが、会社として対応策を考えておきましょう。

【対応策例】

①メール送付の抑制
一定時刻以降・休日に業務のメールを送付することの自粛を命ずる等
深夜や休日に上司から部下にメールを送らないといったルール徹底も大事になります。

②システムへのアクセス制限
一定時刻以降、または、休日はアクセスできないよう設定する等

③時間外労働等の原則禁止
時間外・休日・深夜労働を原則禁止とし、やむを得ない場合には事前申請とする等

④対象者への注意喚起
労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示する等
36協定を超過しそうな社員およびその上司に対し、アラート通知を行う場合です。

長時間労働を防止するためには、管理職が長時間労働をしないような意識が必要です。テレワーク制度を導入する場合は、管理職研修なども実施しながら制度設計していきましょう。

通勤手当・在宅勤務手当の取り扱い

テレワーク制度を導入する際に、通勤手当・在宅勤務手当の取り扱いが問題になりますよね。迷った時は、会社としてのスタンスやテレワークの頻度によって検討しましょう。

①テレワークが許可制の場合

社員の申請に基づき会社が許可する仕組みの場合、在宅勤務手当や通信費などの費用を負担しないという方法も考えられます。

通勤手当(定期代)は従来通り支給するパターンが一般的です。
一方で、今までは3ヶ月分の定期代支給だったものを、1ヶ月分に変更(ただし、月のうち10日以上テレワークをした場合は支給しない)などの対応を行う場合もあります。

②テレワークを推奨している場合

社員がテレワークを活用できるように、通勤手当の支給方法や在宅勤務手当の支給、通信費など費用負担等を検討するべきです。(まったく支給しない場合、その妥当性に疑義が生じる可能性がある)

最近は、通勤手当(定期代支給)を廃止し、実費支給に変更されるパターンが増えています。
ただし、社員が都度申請する必要や、管理側の集計等で通勤手当小管理が複雑になるデメリットがあります。そのための措置として「在宅勤務手当」を支給するような場合もあります。

在宅勤務手当の検討ポイント

メディア情報を参照すると、在宅勤務手当は3000円~5000円/月の支給が多く見受けられます。中には、月15日以上就業した社員にのみ支給する、緊急事態宣言解除に伴い手当支給を終了した会社もあるようです。

また、毎月支給の在宅金手当は割増賃金の基礎に算入する必要があります。
在宅勤務手当を検討する際は、下記のような部分含め検討しましょう。

・継続支給か期間限定支給か
・一時金か毎月支給か
・手当支給する場合、テレワークできない社員とのバランスをどう取るか など

通勤手当の検討ポイント

通勤手当を検討する際には、自社のテレワークの回数・給与計算の負担等を踏まえて判断しましょう。

通信費などの費用負担

通信費・情報通信機器等の費用負担については、労使間でトラブルとなることがあります。テレワーク制度を運用する前に、あらかじめ決めておきましょう。

【通信費等の費用負担に関する検討事項】

・会社と社員のどちらが何を負担するのか
・会社負担の限度額
・社員からの請求方法 など

【テレワークの導入によって発生する費用例】

①情報通信機器の費用
パソコン本体や周辺機器、携帯電話、スマートフォンなどは、会社から貸与しているケースが多いです。

②通信回線費用
モバイルワークでは携帯電話やノート型パソコンを会社から貸与し、無線LAN等の通信費用も会社負担としているケースが多いです。

在宅勤務における自宅内のブロードバンド回線の工事費は、個人的にも使用することがあるため、その負担を個人負担としている例も見られますが、会社が負担するケースもあります。また、ブロードバンド回線の基本料金や通信回線使用料については、個人の使用と業務使用との切り分けが困難なため、一定額を会社負担としている例が多いです。

③文具、備品、宅配便等の費用
文房具消耗品等は会社が購入した文具消耗品を使用することが多いです。切手や宅配メール便等は事前に配布できるものは対象者に配布しておき、会社宛の宅配便は着払いにするなどで対応しましょう。やむを得ず社員が文具消耗品の購入や宅配メール便の料金を一時立て替える場合の精算方法等もルール化しておくとよいでしょう。

④水道光熱費
自宅の電気、水道などの光熱費は、業務使用分との切り分けが困難なため、在宅勤務手当などに含めることが多いです。

テレワーク違反者への対応

テレワーク制度を運用するためには、ある程度性善説に基づいて検討する必要がありますが、万が一、テレワーク時に業務に従事していなかったことが発覚した場合はどう対応すればよいのでしょうか。

結論、通常の勤務と同様に懲戒処分が考えられます。

ただし、懲戒処分をするには就業規則の根拠(服務規律や懲戒事由)が必要です。テレワーク規程においても、在宅勤務時の服務規律を明記しておきましょう。

(例)
・在宅勤務中は業務に専念すること
・在宅勤務時間中は勤務場所以外の場所で業務を行ってはならない など

勤務に虚偽があった場合や明らかに生産性が低い社員は、テレワークの対象外とすることも可能です。

テレワーク時の労災の扱い

テレワークにおいても、業務中のケガや業務に起因する疾病は労災と認められることがあります。

どのような形態のテレワークにおいても、テレワーカーが労働者である以上、通常の就業者と同様に労働者災害補償保険法の適用を受け、業務災害または通勤災害に関する保険給付を受けることができます。最終的には労働基準監督署において個別に適否が判断されることとなります。

【テレワーク時に労災認定されたケース】
自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒したケース。これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められました。

(厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」参照)


以上、セミナーのポイントをまとめてレポートさせていただきました。

リモートワーク導入が推し進められている時世ではありますが、細かなルール設計に関する相談先に迷うこともありますよね。是非こちらの記事を参考に、リモートワークの導入・見直しをご検討いただいただけますと幸いです。

ジョブカン通信 編集部

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