迫る年末調整!!2022年・2023年度の変更点を解説します

迫る年末調整!!2022年・2023年度の変更点を解説します

はじめに

今年も年末調整の時期がやってきました。人事担当者の方は、年末調整について、既に実務を進めている時期かと思います。また従業員の方々は、お手元に保険料控除証明書が届き、年の瀬を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
今回は年末調整に関する法改正について、特に人事担当者、従業員の方々が知っておくべき要点に絞って、解説していきます。2022年はもちろん、2023年の法改正についても解説していきますので、是非、年末調整処理の参考にしてください。

2022年(令和4年) 年末調整のポイント

まず、2022年の年末調整において、対応が必要となるポイントをおさえましょう。以下、法改正のポイントは、「源泉所得税の改正のあらまし」もあわせてご参照ください。

控除証明書の電子データ提出範囲が拡大

近年、年末調整の申告書に添付する各種証明書について、書面に代えて電子データでの提出も認められ、その範囲が広がっています。従来認められていたのは「生命保険料控除」「地震保険料控除」「住宅ローン控除」でした。
2022年は、それらに加え「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の控除証明書も書面による提出に代えて電子データでの提出も認められることとなりました。

クラウドサービスを利用して年末調整を実施する場合、これらの電子証明の添付に対応しているか、予め確認しておくとよいでしょう。従業員の中には電子データでの提出を希望する方もいますので、ご利用予定のシステムの対応可否によって、従業員への周知を検討する必要があります。

2023年(令和5年) 年末調整のポイント

2023年の年末調整に関する変更ですが、既に決まっている事項があります。
特に「非居住扶養親族の適用要件の変更」については、2023年1月支給給与からの源泉所得税額に影響することになりますので、しっかりおさえておきましょう。

非居住扶養親族の適用要件の変更

〇:扶養親族の対象、×:扶養親族の対象外

年齢改正前改正後
70歳以上~
30歳以上~70歳未満×
ただし、以下のいずれかに
該当する者は〇
①留学生
②障がい者
③扶養控除の適用を受けようとする居住者から生活費や教育費等で38万円以上の送金を受けている者
16歳以上~30歳未満
0~16歳未満××

※図の引用元:源泉所得税の改正のあらまし│国税庁

非居住親族の扶養控除の適用要件が変更となりました。国外に居住する「非居住者」の親族のうち、控除の対象となる16歳以上の扶養親族の範囲から原則、「30歳以上70歳未満」の非居住者が除外されることとなりました。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、引き続き控除対象扶養親族と認められます。

  1. 留学生
  2. 障がい者
  3. 扶養控除の適用を受けようとする居住者から生活費や教育費等で38万円以上の送金を受けている者

これを受け、申告の際に下記の資料の提出が必要となります。

  1. 留学ビザ等書類
  2. (確認書類不要)
  3. 38万円以上の送金関係書類

これらの確認書類は、あくまでも2023年の扶養控除等異動申告書で必要となるものです。

しかし、運用としては、2023年1月支給給与の所得税から影響する書類ですので、2022年の年末調整において、書類の提出を求めるのが現実的です。人事担当者は、予め対象となる従業員に対して変更点を丁寧に説明の上、早めに書類の準備をしていただくよう案内しましょう。

住宅ローン控除の控除率等の変更

住宅ローン控除の適用期限について、改正前は令和3年12月31日まででしたが、期限が延長され、令和7年12月31日までとなりました。あわせて、2022年から2025年までの期間で入居した場合の控除率や借入限度額等、各種要件が変更となりました。
主な変更は、下記の通りです。

  • 住宅ローン控除率・・・1%→0.7%に引き下げ
  • 適用される所得要件・・・合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下に引き下げ
  • 借入金残高証明書・・・添付不要(実際に添付が不要となるのは2024年の年末調整)

「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄の新設

令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の「住民税に関する事項」に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が新設されました。新設された背景には、所得税と住民税との間で、(源泉控除対象)配偶者、(控除対象)扶養親族となる「所得」要件の相違があります。

【扶養控除等申告書で申告できる被扶養者の所得額の範囲】

配偶者・・・所得額95万円(給与収入のみの場合、150万円)以下
      ※従業員の所得が900万円以下の場合

他扶養親族・・・所得額48万円(給与収入のみの場合、103万円)以下

扶養の範囲となる上記の「所得額」(95万円・48万円)を算出するにあたり、所得税では「退職所得金額」を含む、住民税では含まないということになります。

そのため、退職金を受け取った配偶者や扶養親族がいる場合、所得税では被扶養者の対象外となるが住民税では対象、となるケースが生ずることがあります。このような場合に、従来では個人で別途住民税の申告を行わないと適用漏れの恐れがありましたが、それを防ぐ目的で今回の様式変更がなされた背景があります。

対象となる従業員は少数かと思われますが、記入の際に戸惑う従業員がいることが懸念されるため、人事担当者は、この新設の背景を押さえて、質問があれば説明できるようにしておきましょう。

年末調整の各種申告書の書式変更

以下、説明文は国税庁ホームページより「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」を引用しています。

令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

  • 「控除対象扶養親族」区分で「非居住者である親族」欄が追加されました。
  • 「住民税に関する事項」で「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が設けられ、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」に該当する人の「氏名」等の各項目や、「寡婦又はひとり親」欄が追加されました。

令和5年分 給与所得に対する源泉徴収簿

  • 「扶養控除等の申告」欄を「扶養控除等の申告・各種控除額」に変更し、各項目を変更するとともに、年末調整の計算が容易となるよう扶養控除等の各種控除額の記載が追加されました。

ジョブカン年末調整

ジョブカン年末調整は、豊富な機能と使いやすさで、人事担当者や従業員の方は、簡単に年末調整処理を進めることが出来ます。詳細はこちらをご覧ください。

3ステップでかんたん年末調整

  • STEP1 かんたんなアンケート形式で控除申告書を自動作成
  • STEP2 控除申告書&給与データから源泉徴収票を自動作成
  • STEP3 還付・徴収から役所提出用書類までワンクリックで実現

マニュアルについては、以下のヘルプページをご確認ください。
▼年末調整マニュアルをダウンロードする(従業員・管理者向け)

今年追加された機能について、詳細は以下のヘルプページをご確認ください。
▼Q. 2021年と2022年の年末調整機能の違いは?

最後に

年末調整は従業員の方々の所得税の年税額を正しく計算し、精算する大事な業務です。しかしながら限られた時間の中で、多くの情報収集、確認、計算、還付・徴収処理が必要になるため、いろいろと気を遣って心身ともに疲れてしまう、と言っても過言ではありません。

その中でも、

  1. 「法改正内容の把握」
  2. 「ご利用のシステムの年末調整機能の把握」
  3. 「スケジュール管理」

が重要になってきます。

まずは、今回の記事を参考に①を早めにおさえておきましょう。
➁については、ジョブカンをご利用の場合はヘルプデスクやマニュアルで、年末調整機能を把握しておきましょう。
そして、③余裕をもったスケジュールを立て、年末調整を駆け抜けましょう。

馬場 祐未

社会保険労務士法人HALZ | 馬場 祐未

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