会計業務のデジタル化~クラウドシステム活用とそのメリット~
経理・財務部門が行う重要な業務として、月次決算を締め試算表の作成があります。
昨今、その業務のデジタル化が加速しています。
経理担当者が毎月試算表(BS/PL)を作成するにあたり、会計ソフトに簿記による仕訳を手動登録していた時代から、デジタルデータをインポートする時代に代わってきたということです。
本記事では、会計業務をデジタル化するメリットとクラウド会計ソフトでできることについて解説します。
クラウド会計
クラウドコンピューティング(以下「クラウド」と言います。)は、インターネットなどのネットワークを通じて、コンピュータ資源(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション)をサービスの形で提供する利用形態で、2010年頃から進展してきました。インターネットさえ繋がっていれば、IDやパスワードを与えられたユーザーが、必要な時に必要な分だけ利用できるサービスで、クラウド会計もその一つです。
従来の会計ソフトは、担当者のPC内にインストールする(オンプレミス)購入型の会計ソフトが主流でしたが、昨今は、ユーザー数等によって課金され、インターネット環境があればどこでも扱える「クラウド会計ソフト」が注目を集めています。
従来の会計ソフトとクラウド会計ソフトの違い
従来の会計ソフトは、パソコン単体で利用する仕様となっており、多数の拠点で同時利用や分散処理が必要な場合は、ネットワーク環境を構築しなければならないといった課題がありました。
2000年代に入り、大手企業の中では、ERP(統合基幹業務システム)型のシステムの導入が進みました。ERPとは、販売業務や購買業務、在庫管理、製造管理など組織全体の業務と情報を一元管理し、会計ソフトへデータ連携できるしくみです。現在では大企業の7割が導入済みといわれています。しかし、ERPは、中堅中小企業にとっては導入が困難でした。理由としては、当ERPシステム導入にあたって、ネットワークの構築やサーバーの管理が必要である点、IT人材を社内にかかえる必要がある点、IT投資コストが多額になるなど、ハードルが高い点があげられています。
クラウド型ソフトウェアの登場によって、インターネット環境さえあれば多拠点同時利用や分散処理が可能になり、今や在宅ワーク時でも活用が進んでいます。
各種クラウド会計ソフト
中堅・中小企業向けのクラウド会計サービスとしてよく比較されるのは、以下のソフトです。
・ジョブカン会計
・freee会計
・マネーフォワード クラウド会計
・勘定奉行クラウド
・PCA会計
・弥生会計
記帳の自動化時代
最近の傾向として、ERP型ソフトとしてクラウド会計ソフトの活用が増えています。経理における、ERP活用とは、記帳の自動化を意味します。従来、担当者が振替伝票を作成し、手動で会計ソフトに仕訳入力をしていたスタイルから、仕訳データはデジタルで自動作成し会計ソフトへインポートするというスタイルへ変わってきています。記帳の自動化により、経理業務の効率化を図ることができるようになりました。
クラウド会計による記帳自動化
クラウド会計では、以下の手順で、記帳の自動化を進めることが可能と考えます。
①売上管理
売上管理とは、売上金額の確定→請求書の発行→売掛金管理(入金消込・残高管理)までのフローを言います。営業担当が入力した売上データから、請求書が自動に発行され、売掛金データとなって会計ソフトに仕訳連携を行います。
得意先から売上代金が入金された場合は、銀行口座の預金データと同期をとり、売掛金入金処理として会計ソフトに仕訳連携を行います。
②仕入・その他経費管理
仕入・経費担当者は、請求書から仕入・経費データを作成します。作成された仕入・経費は、買掛金・未払金発生データとして、会計ソフトに仕訳連携を行います。同時に、ネットバンキングへ振込明細登録も可能です。
ネットバンキングにより振込が完了すると、銀行口座の預金データと同期をとり、買掛金等支払処理として会計ソフトに仕訳連携を行います。
③立替経費精算
従業員は、各自立替経費のデータを入力し、承認フローを通り、経費精算を行います。リアルタイムに処理せずとも、1ヶ月に1度、立替経費の発生データと各従業員への精算データの仕訳処理を会計ソフトに連携させることで対応できます。
④小口現金
小口現金の入出金データを会計ソフトに仕訳連携します。
⑤預金管理
銀行口座の預金データと同期をとり、①②以外の処理として、会計ソフトに仕訳連携を行います。
⑥給与計算
人事担当は給与計算をし、場合によっては③の立替経費を給与支払に合算させて支払手続をとります。
上記で説明しましたとおり、ERP的なしくみを活用したい企業にとって、請求/入金/売掛金管理、仕入/支払/買掛金管理、在庫管理をシステムで行っている場合は、そのデータをクラウド会計にインポートし利用ができるというわけです。
なお、最近では、受注管理、発注管理、在庫管理、給与計算等においてもクラウド上で処理が可能なシステムが提供されています。なかでもクラウド会計と連動したもの(API連携)であればスムーズなデータ連携が可能です。APIとは、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を、他のアプリケーションから呼び出して使用するための接続仕様のこと。また、その接続を他の企業等に公開することを「オープンAPI」と呼んでいます。2017年に成立した銀行法の一部を改正する法律により、銀行と接続したい事業者は、登録すればオープンAPIを活用することができるようになりました。
ほとんどのクラウド会計サービス提供事業者は、銀行やクレジット会社と個別にAPI接続を行っており、クラウド会計利用ユーザーは、簡単に自社の預金口座とクラウド会計ソフトの同期ができます。
クラウド会計活用のメリット
以上より、クラウド会計活用には以下のメリットが挙げられます。
①いつでも、どこでも活用可能
インターネット環境さえあれば、場所を問わず操作可能。働き方を大きく変えるソリューションの一つであることは間違いないです。
②最新のソフトウェアを利用できる
クラウド上で法改正などに対応した最新の状態が保たれるので、自身でソフトウェアのアップデートやメンテナンスを行う必要はありません。いつでも最新の環境を使用できます。
③業務効率化
ERPサービスの活用により、記帳自動化が可能になります。試算表の作成にかかる振替伝票の起票や仕訳処理の手入力といった業務のデジタル化により、大幅な業務効率化が見込めます。
④リアルタイムの財務情報を確認可能
IDとパスワードを所有しているユーザーは、いつでも最新の財務情報を閲覧できます。
以上より、昨今の働き方の多様化は、クラウド会計の導入を考える良い機会であると同時に、会社の経営管理を見直す機会にもなっています。是非経営管理のDX推進の取組みの一つとして、クラウド会計の導入を検討してみてはいかがでしょうか。