テレワーク下の取締役会・議事録はどう取り扱う?登記実務講座のデジタル化について【法務実務講座】

テレワーク下の取締役会・議事録はどう取り扱う?登記実務講座のデジタル化について【法務実務講座】

ジョブカンでは、みらいコンサルティング社と共催し、バックオフィス担当者に向けた実務講座を開催しています。

10月7日は、テレワーク下の取締役会の開催と議事録/登記実務のデジタル化という、少しニッチな実務ポイントをテーマに開催しました。

テレワーク導入により、「電子署名」の活用が注目されていますが、あまりこういった実務に絞ったセミナーは少ないのではないでしょうか?
是非、御社での取締役会の開催、登記の際のご参考にしてくださいませ。

目次
  1. 取締役会開催の形態とその要点
  2. 議事録作成の際に注意するべき事項
  3. 電子署名付き議事録を登記で使用する場合のポイント
  4. 登記実務におけるデジタル化の現状(印鑑が登場するケースなど)
  5. ワークフローシステムのデジタル化

取締役会開催の形態とその要点

改めて取締役会の形態とその際の注意点をおさらいします。
開催形態は大きく分けて下記の3つですが、テレワークの導入にあたり、②の形態の導入が増えているのではないでしょうか。

①全員が同一会場に集合する場合
…取締役全員が同じ場所に集まる必要があります。

②一部の者が遠隔地から出席する場合
…遠隔地からZoom、テレビ電話、電話などで出席する場合は、電波状況を確認し「即時性」「双方向性」が維持される必要があります。また、その旨を議事録に記載する必要があります。

③書面/メール等による「みなし取締役会」
…「みなし取締役会」とは、書面もしくはメールで取締役会全員が賛同の意思を表明した場合、取締役会議があったものとみなされる(会社法第370条)形態の取締役会です。

③「みなし取締役会」を実施するためには、以下4つの点に注視する必要があります。

  1. 定款にその旨が規定(登記で使用する場合、定款も添付書面)
  2. 一人でも反対した場合は、「みなし取締役」は使えない
    →①、②の形態で行う
  3. 三ヶ月に一度は実際の会議体が必要(①、②の形態)
  4. 議事録の作成は「みなし取締役会」でも必要

遠隔地から出席者がいる場合の注意点

テレワーク下で導入検討が進むであろう②の形態の開催について、より詳細に注意すべきポイントを確認しておきましょう。

  • 一同に会するのと同等である状態が必要
    「即時性」(各取締役の音声(及び映像)が即時に他の出席者に伝わること)と「双方向性」(適時的確な意見交換が自由にできること)が必要になります。
  • 議事録に「開催場所」の記載が必要(会社法施行規則第101条第3項1号)
  • 議事録作成の期限の定めあり
    作成の期限は明確な規定はないものの、会社法上、登記事項の変更後2週間以内の登記が求められます。(会社法第915条)登記期限までに出席役員の記名押印が必要となります。

議事録作成の際に注意するべき事項

1.「開催場所」等の記載について

議事録には、「開催場所および開催日時」の記載が必須となっています。

■会社法施行規則第101条3項
「取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(中略)が取締役会に出席した場合に置ける当該出席の方法を含む。)」

では、テレワーク下において、全員がZoom等システムを利用した場合の「開催場所」の記載はどこになるのでしょうか。

その場合は、「議長または代表取締役が出席した場所」が開催場所として記載されます。

なお、当該場所に存しない取締役(中略)が取締役会に出席した場合における当該の出席方法については、出席の方法(「テレビ会議」「Zoomシステム」など)の記載は必要ですが、出席場所までは不要です。

2.議事録の記名押印/電子署名

取締役会議事録には、会社法第369条に則り出席した役員の署名/記名押印/電子署名のいずれかが必要です。

■会社法第369条
第3項:取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席したときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印をしなければならない。
第4項:前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置を取らなければならない。(略) 

では、上記の第4項に記載のある、「法務省令で定める署名の規則」とはどのようなものでしょうか。それが、下記の電子署名に関する内容です。

■会社法施行規則第225条

  • 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
  • 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
  • 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
  • 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。


では、「事業者署名型」の電子署名を付与された取締役会議事録は適法なのでしょうか。

サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用社の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば適法である、と法務省からも公的に発信がなされました。

各経済団体にも通知があり、取締役の意思に基づいて電子署名が行われた取締役会議事録は、会社法が求める取締役会議事録であると示されたため、現在は「適法である」と判断がなされています。

電子署名付き議事録を登記で使用する場合のポイント

まず、登記で使用可能な事業所署名型電子署名というのは限られています。

現状認められている事業所型電子署名は、法務省のHPをご確認ください。なお、今後使用可能と認められる電子契約サービスは追加されていく見込みです。

下の図は議事録作成〜登記申請までの流れを表しています。

②の概要に記載されている電子証明書とは、法務局が発行している商業登記電子証明書を指します。事業者署名型の議事録を使用する場合には、事前に法務局で電子証明書を取得する必要があります。

「事業者署名型」電子署名付き議事録を登記で使用する場合の主な注意点①

事業者署名型電子署名つきの議事録を登記で使用する場合は、会社の「商業登録電子証明」の取得とそれに基づく電子署名が必須(商業登記規則第102条6項)となっています。

取締役会の出席者に印鑑提出者(例:代表取締役)がいる場合、商業登記電子証明による電子署名を必ず付与する必要があります。したがって、「事業者署名型」電子署名が付与されているかは関係がありません。

事業者署名型電子署名が付与されている取締役会議事録は会社法上有効ですが、それを登記で使用する場合には、それに加えて商業登記電子証明書を付与しないと登記では受け付けられません。よって、あらかじめ法務局にて電子証明書を取得する必要があります。

取得手続きは容易(作業は10分程度)ですが、以下の二点に注意しましょう。

① 完全オンラインに対応していないため申請書に会社で押印した紙ベースの書類を法務局に提出または郵送する必要があります
② 費用負担が発生します

法務省からも、商業登記申請に関するガイドブックが公開されていますので、参考にしていただければと思います。

法務省「商業登記申請 添付情報電子署名付与ガイド」
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/static/shomei_guide_200625088.pdf

「事業者署名型」電子署名付き議事録を登記で使用する場合の主な注意点②

・登記・供託オンライン申請システムを使用して商業登記電子証明書による電子署名を付与する必要があります。法務局が用意をしているシステムを事前にダウンロードして準備しましょう。

・代表取締役の変更など、個人の実印の押印・印鑑証明書の添付を求められている場合は、「事業書署名型」の使用ができません。

例) 代表取締役交代の場合の取締役会議事録、新任代表取締役の就任承諾書など

そのため、個人の実印の押印・印鑑証明書が求められる場合、現状では下記1・2のいずれかで対応する必要があります。

  1. 従来と同じく、議事録を署名で作成〜個人実印の押印と印鑑証明書の添付する
  2. 議事録の電子書面に「公的個人認証サービス電子証明書」(マイナンバーカード)か「特定認証業務電子証明書」による電子署名の付与する

商業登記の添付書類に書面と電子書面の両方がある場合の対応

添付書面が電磁的記録により作成されていない場合は、書面の提出又は送付も認められています。「事業者署名型」の電子署名付き取締役会議議事録のみオンラインで送信し、他の書類は郵送で法務局に提出する、混合した対応が可能です。

登記実務におけるデジタル化の現状(印鑑が登場するケースなど)

①オンライン申請による会社設立の登記(株式会社・合同会社)

「未来投資戦略2018」において、令和元年度中にオンラインによる法人設立登記の24時間以内の処理を実現することとされ、現在はオンライン申請による会社設立の登記(株式会社・合同会社)は「24時間以内の処理」が実施されています。

「24時間以内処理」の対象条件は以下の5つがあります。

  1. 役員等が5人以内であること
  2. 添付書面情報が全て電磁的記録(PDFファイル)により作成され、申請書情報と併せて送信されていること(完全オンライン申請)
  3. 電子納付が利用されていること
  4. 補正がないこと

ただし、現時点では、会社の印鑑の法務局への提出は、書面(印鑑届書)への押印〜持参又は郵送で対応する必要があります

現状の印鑑提出の義務は以下のような状況です。

  • 「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない」(商業登記法第20条第1項)
  • 会社代表者の印鑑を、必ず書面で法務局に持参又は郵送で提出する必要がある。
  • 設立登記自体は完全オンライン化可能だが、印鑑の提出を別途行う必要がある。
  • 上記と同様に、会社の電子証明書の取得についても完全オンライン化ができない状況にある。

ですが、2021年2月15日(予定*)からは上記課題を解決するために、改正商業登記法が施行され、印鑑の提出義務を定める規定が削除され、印鑑の提出が任意となります。

印鑑の提出が任意となることにより、設立登記など完全オンラインの障壁がなくなっていく見込みです。なお、本改正に伴い会社の電子証明書の取得も完全オンライン化されるでしょう。

あと半年もすれば、会社の印鑑証明がない会社も出てくるような状況が想定されますね。

*令和2年9月1日法務省会社法改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集(パブリックコメント)より
 https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080224&Mode=0

ワークフローシステムのデジタル化

以上、ご案内したように、行政手続きのオンライン化も日々加速しています。
その変化に合わせ、社内における申請・稟議についても紙処理を減らし、オンライン上でスピーディーに対応できる状況を整えている会社様も増えている印象です。

社内の申請・稟議をデジタル化することは、ただ紙書類を減らすだけではなく、社内の意思決定を早め、会社全体の生産性にも影響を与えます。

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以上、セミナーのポイントをまとめてレポートをさせていただきました。
もし、法務実務に関し相談してみたいという場合は下記司法書士法人デジタルフォース様までお気軽にお問い合わせくださいませ。

ジョブカン通信 編集部