わかりやすく社労士が解説!人事労務Q&A【社会保険編①】
人事労務担当者であれば、正確に把握しておく必要のある社会保険。本記事では、必ず把握しておきたい用語の定義等、社会保険に関するポイントをQ&A形式で社労士が分かりやすく解説します!
Q. 社会保険の「報酬」とは?
A. 健康保険法・厚生年金保険法において「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されています。
基本給・残業手当・住宅手当・通勤手当など、給与規程等に基づいて経常的に支払われるものは広く該当します。また、事業主から食事や住宅などの直接提供を受けている場合は、その価額を算出して「現物給与」として報酬に含めます。年4回以上支払われる賞与についても、「賞与」ではなく「報酬」として取り扱います。
一方、「報酬」に該当しないものは、「労働の対償として受けるものではないもの」です。具体的には、傷病手当金・労災の給付・慶弔見舞金などが該当します。手当関連の名称は各社で異なりますが、名称で判断するのではなく、支給条件・内容が「報酬」に該当するかを判断します。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)
Q. 労働保険の賃金とは?
A. 賃金、手当、賞与、その他名称の如何を問わず「労働の対償として支払うすべてのもの」をいいます。賃金とするもの・賃金としないものは図表として公開されています。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)
Q. 随時改定を行う場合の留意点は?
A. 社会保険(厚生年金保険・健康保険・介護保険)における毎月の保険料は、個人ごとの報酬月額に応じて決められた標準報酬月額をベースに計算されています。この標準報酬月額は、定時決定を通して年に1回見直しがされますが、昇(降)給等の固定的賃金の変動を伴って大幅に報酬が変わった場合には、定時決定を待たずに随時改定を行います。
随時改定は次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
①昇給または降給等により固定的賃金が変動した
②変動月から3か月間に支給された報酬の平均月額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある
③3か月とも支払基礎日数が17日以上である ※特定適用事業所の短時間労働者は11日以上
昇給や降給によって固定的賃金が変動した場合でも、非固定的賃金である残業代等の有無によって②を満たせない場合、あるいは欠勤日数があり③を満たせないことも考えられます。また、昇給や降給が月の途中で発生する場合は、給与計算上で日割額を支給することもありますが、その場合、あくまで満額支給が開始された月を起算月(変動月)として3つの条件該当を確認します。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)
Q. 定時決定を行う場合の留意点は?
A. 社会保険(厚生年金保険・健康保険・介護保険)における毎月の保険料は、個人ごとの報酬月額に応じて決められた標準報酬月額をベースに計算されています。この標準報酬月額は年に1回見直しがされており、定時決定(算定)として届出が必要です。
定時決定は毎年7月1日現在の全被保険者が対象とされており、同日前3か月(4月、5月、6月)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除した額を報酬月額として届け出ます。原則として各月の支払基礎日数が17日未満である場合、その月は除いて計算を行います。
なお、6月以降に入社した人や7月随時改定の対象者など、定時決定が不要となる被保険者もいるため、何人分の提出が必要となるのか整理する必要があります。
また、育児休業などの理由があり、3か月全ての月の報酬がない場合等、そのまま定時決定を行うことが実態とかけ離れる場合には、保険者算定として従前の標準報酬月額がそのまま適用されることもあります。毎年7月10日が提出期限となりますので、6月の給与計算が終わった後に早急に準備を進めていくのが良いでしょう。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)
Q. 社会保険における賞与の定義とは?
A. 社会保険における賞与とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものをいう。なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされ、また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は対象外である」と定められています。
金額の大小に関わらず、上記基準に該当すれば、社会保険上は賞与として取り扱うこととなります。
新入社員の入社準備金としての「入社一時金」や社員紹介制度に基づく「社員紹介料」など、年3回以下の一時的な支給が想定されるものは、幅広く賞与としての取り扱いが考えられます。支給される項目が、どのような性質のものであるのかを判断し、適正な手続きを行うよう留意しましょう。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)
Q.各種手続きにおける提出期限は?
A.手続きごとに定められた提出期限が異なります。主なものは以下のとおりです。
なお、提出期限を過ぎてしまった場合でも、被保険者の不利益を避けるため、年金事務所、ハローワーク等で届出を受領してくれる可能性が高いです。別途添付書類を求められることもありますので、早急に準備して提出を行いましょう。
(回答:吉田 爵宏・今井 礼子)