フルリモートの働き方【株式会社TECO Designの場合】
働き方改革や新型コロナウイルスの蔓延の影響もあり、2020年は特にリモートワーク(テレワーク)が注目を集めました。弊社(株式会社TECO Design)では、創業時からフルリモートの環境で業務を行っています。 そこで今回は、弊社が行っているフルリモート環境での労働時間の管理方法をお伝えします。
また、属人化を防ぐタスク管理やコミュニケーションの工夫、情報の伝達やコントロール方法など……。リモートを検討していたり、導入直後の企業様にとって参考になれば幸いです。
リモートワークとは?
リモートワークを導入するために必要なこと
・勤怠管理の考え方
もっとも気になるのは、勤怠管理方法かと思います。これについては『ジョブカン勤怠』などのクラウド勤怠管理システムを利用すれば問題ないでしょう。
パソコンで作業することがほとんどだと思いますので、パソコンもしくはスマホ上での勤怠打刻がおすすめです(※さぼったらどうするの?などの疑問については後述します)。
勤怠や申請を承認する立場の方は、メンバーの勤怠を週1回くらいのペースで確認・閲覧するといいでしょう。物理的に離れていると、メンバーがどれくらい働いているのかを実際に見ることはできませんので、確認は必須だと思います。
・作業環境整備
続いては作業の環境整備です。
まずはパソコンやモバイル端末、通信回線。それから、長時間座っても疲れない椅子やデスクは、長い目で見るとかなりパフォーマンスに影響しますので、そろえたほうがいいですね。
Webミーティングの回数も増えるので、イヤホンとマイクへの投資も必須です。音声のクオリティはMTGの参加者全員に影響します。「音声が悪い」という理由で大切な議論がスムーズに進まないこともありますよ。
また、もし可能であれば、仕事をするスペースは1箇所に固定しないほうがいいです。弊社のスタッフの場合、個人情報の取り扱いのない思考系の作業を屋外(中庭)で実施したりしています。自家用車をお持ちの方は、会議のみ車の中で、というものよいと思います。数箇所の作業スペースがあれば気分転換になりますし、リフレッシュできるので、効率も上がりますよ。
リモートワークは働き方改革ではなく「休み方改革」
・休みを先に決める感覚で業務構築
オフィスワーク・リモートワーク問わず、「働く時間」を中心に考えてしまうことが多いと思います。
しかし、リモートワークの場合には「休む時間」を基準にスケジュールを組むほうがスムーズです。「今日は●時に帰ります」と社内チャットで宣言することで、業務時間とプライベートの時間をきちんと切り分けられます。そして夜間・土日といった業務外の時間はパソコンを開かない(連絡もリマインドする)など、組織全体が「休む時間」に焦点を当てるのが運用のコツです。
・「遊びごころ」「ふざけた感じ」を元に構築
顔が見えない時間が多いからこそ、まじめすぎる雰囲気は極力なくしたほうがいいと思います。もちろん、まじめな会話も必要ですが、オフィスで話すような業務上の会話をそのまま文字にして伝えると、堅い雰囲気になり過ぎてしまうと感じたからです。
例えば、通常、退勤時には「お先に失礼します」と言うことが一般的ですよね。しかし、弊社の場合はフルリモートですので「そろりしまーす」「そろり(絵文字のみ)」と言う言葉(絵文字)が定着しています(笑)。メンバーの一人が「本日はそろりと失礼します」と言ったことがきっかけだったかと思います。その日のうちに「そろり」絵文字が生まれ、退勤時は「私もそろりします」と言うようになり、すっかり社内の共通語になりました。
こういった社内用語については、途中から参加したメンバーにも伝わるよう、情報共有ツール『toaster』の用語集にまじめに登録しています(笑)。
導入難易度と採用時の注意点
・いきなりリモート&フレックスは難しいのか?
結論としては、難しくないです。
そもそも「リモートだから」「フレックスだから」難しいということはないと思います。弊社も、もともと「リモートワーク」の会社にしよう!と思って創業したわけではありません。出会えたメンバーが働きやすい条件を作っていった先にあった「リモート」「フレックス」という手段を選んだだけです。
今となっては、リモートワークだからこそ住む場所に関係なく出会えた、フレックスタイムを選択肢に入れたから、従来の働き方では働きにくい人がジョインしてくれた、という利点もあります。
リモートやフレックスの働き方は、「脱属人化」「脱ペーパー」「脱出社」といった課題も解決でき、今の時流にぴったりです。
「リモートだと効率が落ちる」といった懸念がある場合は、最大限の成果をあげるための方法を考える必要があると思います。
また画面越しなので、メンバー同士のコミュニケーションが希薄にならないようにすることが大事です。わたし自身は、業務外の雑談などで、できるだけコミュニケーション量を増やすよう心がけています。
リモートワークのコミュニティにおいては、自己開示することの重要度が非常に高いです。自己発信することが苦手なメンバーには絵文字での反応を促すなど、コミュニティ全員のために自己発信の重要性を伝えていきましょう。
採用段階である程度、気をつける
よくリモートワークでは「さぼる」「さぼらない」が問題提起されるのですが、この議論についてはもう終わっていると感じています。つまり、オフィスだろうがリモートだろうが関係ないということです。オフィスだとさぼっていない、という証拠はないですから(笑)。
よく勘違いされるケースも多いのですが、「リモートワークはオフィスワークよりラク」ではありません。リモートワークのほうが、「成果」で判断される割合が多くなるためです。
一般的な評価項目は「業績」「能力」「情意」ですが、リモートではこの「情意」の部分が見えなくなります。つまり「がんばってます」は見えないということです。
成果でしっかりと判断・評価できる仕組みになっていれば、「さぼる」「さぼらない」ではなく成果での判断ができますよね。「仕事をしたつもり」をなくしていくこともできます。
採用の段階で特に注目しているのは「仕事に楽しんで取り組むかどうか」「責任感があるかどうか」です。 まだまだサービスをブラッシュアップする余地が大きな分野ですので、「自ら考えて仕事を進めていけること」もポイントにしています。
弊社の業務内容は幾分、投下した労働時間と成果が比例する側面もありますが、いかに自分のスキルを高めて、知識・経験を活かしていけるかが非常に重要だからです。
箸の上げ下ろしまで管理しなければならないような方は、残念ながら見送ります。管理される側も、気持ちよく働けなくなってしまうでしょうから。また、「リモートに憧れていて……」といった動機だとうまくいかないので、その場合も採用を見送らせていただいています。
タスク管理方法
見える化の徹底
・案件ごと、属人化の排除
リモートワークだとやっている仕事を見える化する、というのが非常に重要になってきます。弊社の場合、『Bizer team』というツールを使って、全員でタスクを共有しています。
労務管理や給与計算といったバックオフィス業務は、とにかく属人化しやすい業務です。そのため「休みたいときに休めない」「無理して仕事をしなければいけない」といった状況に陥りがちです。
この状況を避けるためにも、人に業務をつけるのではなく、業務(タスク)に人をアサインすることを徹底しています。案件ごとにタスクを設け、さらに中タスク、小タスクに分けて、小タスクごとに担当者を割り振ります。
とはいえ、担当者に絶対的な拘束はありません。現在、誰がその仕事を実施する予定になっているか、という可視化のためのツールです。それにより、業務の偏りも是正しやすくなります。
以前、お子さんのインフルエンザによりしばらく欠勤となったメンバーがいましたが、別のメンバーがタスクを引き継ぎ完了させました。当該タスクのやりとりに関するコメントは全てタスク内に履歴がありますので、特段の引き継ぎは必要ありません。また、休みから戻ったメンバーもタスク内のコメントを確認することで経緯が把握できます。
教育はどうすべきか
・オンボーディング資料
大企業であれば入社時の研修資料やe-learning体制が準備されているでしょう。しかし一般的な中小企業では研修自体が属人化していたり、そもそも研修体制がないことも多いのではないでしょうか。
弊社の場合はフルリモートなので、入社時の手続きや研修も対面では行えません。そこで、入社時は「入社時オンボーディング」という資料を見ながらセルフでできる仕組みにしました。
パソコンの設定、利用しているツールのアカウント登録など、入社時に必要な手続きはオンボーディング資料を見れば、どこからでも自身で行えます(実務上のスキル向上については後述します)。
コミュニケーション方法
Slackが基本
・とにかくコミュニケーションはSlackに集中(DMは原則禁止)
業務上の話はもちろん、業務外の雑談もオープンチャットで行っています。
「最近はまっているYouTube動画です」「これから子どものお迎えでちょっと抜けます」「週末はここ行ってきましたー!」などなど、オフィスなら業務の合間に話すような雑談も、Slack上で行っています。
業務中も 、「#ひとりごと」というハッシュタグをつけたコメントが流れてきたりします。これについては、反応してもいいし、しなくてもいい、という運用です。リモートワークは、業務に集中しすぎるというデメリットもあります。そのため、業務以外のことを話して息抜きする必要もあります。
その他、『Simple Poll』をSlack連携して使っています。これはSlack上でアンケートを作れるサービスです。「今日のお昼は何がいいと思いますか?:パスタorうどん」といったアンケートもしているメンバーもいます(笑)
今後やりたいことは「オンラインランチ」「オンライン誕生日お祝い」です。
リモートワークでは、とにかくコミュニケーションを見える化していくことが非常に重要になってきます。実際にやってみるとわかりますが、リモートワークは集中ができるものの、人との接点が極端に小さくなり、寂しくなるからです。
・絵文字推奨(いいにくいことも絵文字を使おう)
リモートワークに限らず、Slackなどテキスト主体のコミュニケーションでは、ちょっと冷たい感じがしてしまうこともありますよね。ですから、絵文字をどんどん利用することをおすすめしています。
「承知しました」→「🙆♀️」
「ありがとうございます」→「感謝(絵文字)」
こんな感じで、メッセージのやりとりにも個性が出ます。
テキストコミュニケーションの場合、相手への過度な配慮を感じてしまうケースが発生します。絵文字を活用して、表情豊かなコミュニケーションができる環境づくりが、リモートワークを長く続けるコツだと思います。
音声、動画はガンガン推奨
・実は意外と音声でのやりとりが多い!
普段のやり取りはBizer teamでのタスク管理と、Slackでのテキストが中心です。テキストメインにしているのは、全メンバーが後からでもきちんとやり取りを確認できるためです。ただし、ちょっと補足したいときや詳細を打ち合わせしたいときは、WebMTGも随時実施しています。
また会議として使用するだけでなく、WebMTGのシステムを使って自発的にExcelハックについて説明動画作成し、共有しているメンバーもいます。
社内で最近人気なのは、zoomのバーチャル背景を使ったMTGです。メンバー思い思いの場所(バーチャル)からMTGに参加しています。
だからこそリアルも大事
・オフラインのランチなど
オンラインでの業務がうまく回っていても、ときにはオフラインで向き合うことが大事です。わたし自身はお客様訪問やセミナー登壇などで全国を回ることがありますので、スケジュールが合えば各地のメンバーと会ってランチを取っています。もちろん自由参加ですし、お子さんと一緒に参加されるメンバーもいます。オンライン中心だからこそ、オフラインの交流も重要です。
教育、スキル方法
やりやすいとかやりにくいではなく、環境前提での学びの構築を
「リモートワークだから教育がしにくい」ではなく、リモートワークで最大限の成果をあげる方法はどれか、という考え方にシフトしていくことが重要だと思います。コロナウイルスの影響により、すでに世の中はゲームチェンジしています。リモートワーク、という環境を前提にした教育体制を組み立てることが重要です。
会社が要求するスキルの見える化
・スキルマップを使って、習得すべきスキルを明示
弊社の場合、労務や給与、勤怠のクラウドシステム導入支援にかかる守備範囲は膨大です。
それぞれのサービスの知識、法律知識、業務再現性や仕組み化まで……。一つひとつの知識を求めるだけでなく、同じ内容を、別の角度から考えて、設計・質問することも重要です。OJTを実施できないと、メンバーも何を身につければよいか迷ってしまいます。
弊社では現状、三種類のスキルマップを使い、業務範囲とスキルを可視化し、全てのメンバーと共有しています。スキルマップとは、弊社で独自に作成した表です。縦軸に「身につけてほしいスキル」、横軸に「レベル」をマッピングしています。
・トレーニングシートで「教え方も標準化」
お客様によって扱うシステムはさまざまですから、弊社メンバーは同時にいくつものシステムを扱います。
例えば、給与計算ツールの初期設定にしても、扱うシステムが違えば押さえるべきポイントは異なります。これまでの導入支援実績や社労士事務所出身のメンバーの経験を掛け合わせ、ツールごと、レベルごとに必要なトレーニングを整理し、トレーナーとトレーニーによる社内研修も実施しています。
このときトレーニーは、「トレーニングシート」という、教え方を取りまとめたシートに沿って研修をします。リモートワークの場合、OJTができない、つまり誰からも見えない空間での教育となってしまいます。この弱みを、トレーニングシートによりフォローするなどの仕組みを整えることで、全員がもれなくスキルを身につけることが可能になります。
メンバーごとに得意不得意はあると思いますので、弊社の場合は得意な分野はとことん上を目指し、そうでない分野は基礎をおさえて……、という形にしています。レベルでいうと、3までは必修、4~5については選択式です。こうしたトレーニングによって、リモートで分散しがちな社内全体のスキル底上げを目指しています。
・専門性の更新
人事労務に関する法律は常に変わりますので、法改正情報や、ちょっとしたハックなどは、Slackに設けた専門チャンネルで社内共有しています。
法律だけでなくシステムも日々新しい物が生まれていくでしょうから、どんどん取り入れていきたいところです。リモートだからこそ、専門情報やアップデートについては自身のタイミングで確認できるよう、専門チャンネルなどにストックすることが重要です。
弊社は「リモートワークの波に乗った」というよりは、メンバーの働き方を考えた結果がリモートワーク・フレックスタイムだったにすぎません。当初は「オフラインだったら、出社形式だったら●●ができるのに…」や「リモートだとここがやりにくいなぁ…」という思いが正直ありました。けれど、いつまでもこれまでのやり方に固執している場合ではありませんでした。
当然、出社形式とリモートのどちらが優れているのか、といった話ではありません。しかし、時代や世の中のルールは変わったなと思っています。“常に変化に対応しながら働くこと”を大切にしていく企業になれたら、そして、同じような企業が増えたらよいなと思っています。
株式会社TECO Design | 杉野 愼
神楽坂駅徒歩1分のショールーム”CLOUD STATION”を運営。ジョブカンシリーズをはじめ、人事労務クラウドシステムを実際に操作・比較しながら、自社に合ったシステムを見つけることができる国内唯一の場所です。これまでに、250社を超える企業の勤怠管理・給与計算等のクラウドサービス導入支援をサポートしている実績から、業務フローの改善、見直し含めて、まるごとご相談を承っています。
また、バックオフィス業務の実務担当者に寄り添うオウンドメディア”CLOUD STATION”では、ジョブカンをはじめとした人事労務クラウドのノウハウ記事、機能解説・比較記事を公開しています。
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